マタイによる福音書の第1章は“イエス・キリストの系図”から始まっています。カタカナの名前が羅列してあるこの箇所は聖書を初めて読む人にとって、結構なハードルになっている、ということをよく聞きます。
しかしマタイは、はっきりとした意図をもって、この福音書を系図から書き始めました。ユダヤ人は血筋を重んじる民族でしたので、救い主であるイエス・キリストがどのような人々の子孫であるのか、ということを示すはかなり重要なことでした。イエスさまの系図は次のように始まります。
「アブラハムの子ダビデの子、イエス・キリストの系図。」(マタイによる福音書1章1節)
第一に、イエスさまはアブラハムの子孫であり、イスラエルの王ダビデの子孫であることが明記されています。創世記の12章で神さまはアブラハムに対して「あなたの子孫を通して、わたしは全世界を祝福する」と約束してくださいました。ダビデに対してはサムエル記上の7章で「あなたの子孫を通して、わたしは王国(神の国)を揺るぎないものとする」と約束してくださいました。この二つの約束は旧約聖書の重要な神さまの約束(契約)として知られています。そして、イエス・キリストはこの契約の成就である、ということがマタイの第一の主張です。
しかしマタイはこの系図に女性たちの名前が加えることによって、もうひとつのメッセージを語っています。名前を挙げられている女性たちはタマル、ラハブ、ルツ、“ウリヤの妻”であるバテシェバ、マリアの5人です。
この五人の特徴は・・・
- 人生の中で痛みや悲しみを経験した女性たちです
- 自分や他の人の罪に翻弄され苦しめられた女性たちです。
- 何人かは異邦人としてのバックグラウンドを持っている女性たちです。
- 奇跡的に救いを経験した女性たちです。
それ故にキリストは・・・
- 私たち人間の痛みや悲しみの只中に来てくださったお方です。
- 罪ある人間の歴史に臆することなくその名を遺してくださったお方です。
- ユダヤ人ばかりでなく、全世界の人々を救うお方です。
- 私たち人間を十字架と復活により罪の縄目から解放する救い主です。