2020年9月13日「裁判官でなく、弁護士であれ」加山献牧師

 

マタイによる福音書7章1節~6節

「人を裁くな。あなたがたも裁かれないようにするためである。あなたがたは、自分の裁く裁きで裁かれ、自分の量る秤で量り与えられる。あなたは、兄弟の目にあるおが屑は見えるのに、なぜ自分の目の中の丸太に気づかないのか。兄弟に向かって、『あなたの目からおが屑を取らせてください』と、どうして言えようか。自分の目に丸太があるではないか。偽善者よ、まず自分の目から丸太を取り除け。そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目からおが屑を取り除くことができる。」(1節~5節)

 

「人を裁いてはならない」とイエス・キリストは言われました。自分自身の悪いところは棚上げにして、他の人の些細な欠点ばかりに目を留めてしまう、、、私たちは皆、そのような傾向を持っています。

自分の目の中の大きな太い丸太に気付き、まず自分の目からその丸太を取り除きなさいと、主イエスは勧めておられます。そうすれば、はっきり見えるようになって、他の人をお助けできるようになる。まったく、その通りです。

英語の聖書では「汝、裁くなかれ」を”Do not Judge”と訳されています。”Judge(ジャッジ)”という英単語は、スポーツの「審判」という意味で使われるように、ひとつのルールに乗っとってゲームを導くことを意味します。スポーツにおいてルールがあることは大切であり、審判の働きは重要です。

しかし、ここで主イエスが取り扱われたのは、私たちは皆「自分なりのルール」を持っており、自分の価値観、自分の道徳観、自分の人生観で他の人を測る、という問題です。私たちは皆、この「自分ルール」に従って、この人は良い(セーフ)、この人はだめ(アウト)と決めつけてしまう性質をもっています。

創世記に描かれているアダムとエバの罪は、「善悪の知識の木」から実を取って食べてしまったことでした。つまり、「何が良くて何が悪いかはわたしが決めます」ということが罪のはじまりでした。神様を差し置いて、この私が「私の基準」に従って善悪を決めることがはじまりました。そうするとアダムはエバを、エバは蛇を責めはじめたのです。

”Judge(ジャッジ)”という英単語が示すもう一つの役職は「裁判官」。この社会において、裁判官も大切な存在です。この世の法律に従って、何が正しいかを判断し、守るべきものを守り、罰すべきものを罰する、それが裁判官の務めです。

お伝えしたいことは、そのような制度としての裁判官が必要ない、という意味ではありません。では聖書が語る「人を裁いてはならない」とはどういう意味なのでしょうか。究極的に人を裁くということは神の領域である、ということです。キリストが私たちに求めておられるのは、裁くものとしての生き方ではなく、弁護者としての生き方なのです。

 

「神聖なものを犬に与えてはならず、また、真珠を豚に投げてはならない。それを足で踏みにじり、向き直ってあなたがたにかみついてくるだろう。」(6節)

 

犬や豚は当時のユダヤ社会では大変忌み嫌われた動物でした。今でも厳格なユダヤ教やイスラム教の方は豚肉を避けられます。ですが、キリスト教はそのように考えません。なぜでしょうか?イエス・キリストの教えと存在が律法(それまでの宗教的伝統)に対する理解を変えたからなのです。

 

「それから、イエスは群衆を呼び寄せて言われた。「聞いて悟りなさい。口に入るものは人を汚さず、口から出て来るものが人を汚すのである。」(マタイ福音書15:10~11)

 

「更に、次のように言われた。『人から出て来るものこそ、人を汚す。中から、つまり人間の心から、悪い思いが出て来るからである。』」(マルコ福音書7:20~21)

 

上記の二カ所は“汚れたものとは、実は私たちの内側にあるのだ”という主イエスの教えです。私たちの内側に潜む獣に、私たちの大切なものをわたしてはいけない。私たちの怒りや妬み、その他のあらゆる負の感情に人生を明け渡してしまうなら、それらは踏みにじられ台無しになってしまいます。

「汝、裁くなかれ」という教えは、他の人のため、健康的な人間関係を育むため、ということもありますが、何よりもまず、それは私たち自身のためなのです。やがてこの人生を終えて、神さまの前に立つ時に、神様は「あなたの学歴、職歴、その他の功績を聞かせてください」とは尋ねられません。あなたがどのようにキリストに応答し、神を愛したか。そして、あなたがどのように隣人を愛し、人とどのように接してきたかを神は尋ねられるでしょう。「裁いてはならない」とは、具体的に人を愛する生き方につながっているのです。                                                  (9月13日)

 

 

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